日本国内で再生可能エネルギーを中心とする発電事業を推進―三峰川電力・福島での取り組み

丸紅株式会社 国内電力プロジェクト部

丸紅は、アジア新興国での火力発電プロジェクトをはじめ、海外23ヵ国で49案件の発電事業を手掛けており(2015年4月末時点)、各地で生活の基盤となる社会インフラの整備に注力しています。一方、国内では、電力小売りの完全自由化を見据え、グループ企業である三峰川電力㈱を中心に、中小型の小水力発電事業の強化を目指しています。

福島県下郷町「花の郷発電所」が竣工


花の郷発電所

6月19日、福島県下郷町において、丸紅グループにおける最新の小水力発電所である「花の郷発電所」の竣工式が開催されました。同発電所は三峰川電力㈱が建設し、6月18日より商業運転を開始しています。当日は、下郷町・星學町長、下郷町議会・佐藤一美議長、福島県南会津地方振興局・久保木光治局長らが出席し、本件に対する地元の期待が垣間見える竣工式となりました。

本事業は、東日本大震災後に南会津郡内に建設される初めての小水力発電設備で、福島県下郷町中山地区の準用河川・大沢川より取水し、約1,200m下流の大沢地区に小水力発電所を設置するものです。年間発電量は一般家庭約300世帯の年間消費量を見込んでおり、発電した電力は再生可能エネルギーの固定価格買取制度を活用して、20年間にわたり売電していきます。

東日本大震災後、再生可能エネルギーへの関心が高まる中、2012年7月より再生可能エネルギーの固定価格買取制度が施行されました。その中でも小水力発電事業は大規模なダム建設と比較して自然豊かな日本風土への環境負荷が低く、今後電源の多様化が進む中で大きな可能性を持つ電源の一つとして注目されています。

また福島県は、東日本大震災復興構想会議でまとめられた「復興への提言〜悲惨の中の希望〜」において、再生可能エネルギー先駆けの地とすべきと提言されています。本件は、福島県南会津郡下郷町内の公有地や民有地を活用し、同町内を流れる阿賀川水系大沢川の流水を利用する発電事業で、福島県内における再生可能エネルギー発電設備等の導入事業に対して補助する「福島県市民交流型再生可能エネルギー導入促進事業」として採択されました。


特に下郷町は、「下郷町新地域エネルギービジョン」を策定するなど、再生可能エネルギーの導入を進めており、中でも小水力発電に期待を寄せています。そこで三峰川電力㈱は、下郷町と「下郷町における再生可能エネルギー開発に関する基本協定書」を締結するなど、相互の信頼関係を築いています。丸紅グループでは、今後も同地域内にて複数地点の開発を進め、メンテナンスの効率化などのシナジー効果を創出したいと考えています。

丸紅グループは、2006年から小水力発電の運営を行い、本件は三峰川(長野県伊那市・2ヵ所)、蓼科(長野県茅野市・2ヵ所)、北杜(山梨県北杜市・3ヵ所)に続く国内8ヵ所目の商業運転を開始した案件になります。今後は、2020年までに国内30ヵ所程度の中・小水力発電所の開発を目指し、全国で環境に優しい再生可能エネルギーの創出に積極的に取り組んでいきます。

メガソーラー、洋上風力発電への挑戦


山間地に広がるいわき市のメガソーラー全景

丸紅グループでは、小水力発電だけでなく、再生可能エネルギー事業の一環として、メガソーラー運営、洋上風力発電へも視野を広げています。

福島県内の案件としては、2014年12月、三峰川電力㈱がいわき市内の遊休眠地を賃借して、出力2.2MWのメガソーラーの運営を開始しました。山間地においても景観を損なわず、効率良く発電できるよう、太陽光パネルを開けている八つのエリアに分散して設置するなど、工夫を凝らして設計しています。年間発電量は、一般家庭約700世帯の年間電力消費量に相当する250万kW/時を見込んでおり、発電した電力は再生可能エネルギーの固定価格買取制度を活用して東北電力へ売電しています。

また2012年より続いている「福島復興・浮体式ウィンドファーム実証研究事業」では、丸紅はプロジェクトインテグレータを務めており、福島県沖に第1期事業として洋上変電所1基と2MW浮体式風力発電設備を設置した他、現在は大型浮体式風力発電設備2基を設置する第2期事業に取り組み中です。2015年6月7日には福島県小名浜港において7MW風車組立工事が完了し、同22日には同地にて安全祈願祭が開催されました。組立工事が完了した7MW浮体式風力発電設備は、2015年6月末に実証海域に曳航、同7月より海洋工事を開始する予定となっています。

また、第2期工事にて設置する2基目の大型浮体式風力発電設備についても、2015年度中の設置に向け取り組みを進めています。

本研究事業により、浮体式洋上風力発電のビジネスモデルを確立することは、大規模洋上ウィンドファームの実現に大きく寄与するとともに、将来的にはこのノウハウを海外プロジェクトに展開することにより、日本の主要な輸出産業の一つに育成することにもつながると考えています。

このように、丸紅はグローバルプレーヤーとして世界各国で持ち分での発電容量1万MW を超える幅広い電力事業を展開する一方、国内においても、小水力、太陽光、風力といった、環境負荷の少ない再生可能エネルギー事業に取り組んでいます。今後も、地域経済の成長、社会貢献に寄与できるよう、各国・地域のニーズに合った発電事業を推進していきます。

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