東日本大震災以降の電力需給状況と安定供給確保に向けた取り組み

電気事業連合会 工務部長
早田 敦

1. 震災直後の電力需給状況


東日本大震災により、震源地に近い東北地方から関東地方に至るまで、広範囲で停電が発生し、停電軒数は、震災直後で東北電力と東京電力の管内でそれぞれ全軒数の約7割、2割に上りました。

また、発電所は太平洋側を中心に広範囲で被害を受け、東京電力、東北電力管内でそれぞれ約4割の電力供給力が失われました(図1)。


被災した火力発電所の状況

被災した火力発電所では、早期復旧に全力を挙げ、その多くを震災から数ヵ月で運転再開させました。その後、2013年4月には、津波により被害の大きかった発電所も含め、全ての被災火力発電所1,360万kWを復旧させました。

2. 現在までの電力需給状況

現在、原子力発電所の停止が長期間継続しており、その代替は高経年機を含む火力発電所が担っている状況です。2014年度の電源別発電電力量は、原子力発電の構成比が0%となる一方、火力発電は88%と、過去最高のレベルです(図2)。この火力高稼働により、海外からの化石燃料の輸入は著しく増大し、2014年度の電力会社の燃料費は、震災前に比べ約3.4兆円増加しました(国民一人当たり3万円弱の負担増)。また、2013年度の電力会社の温室効果ガス排出量は、震災前に比べ約30%増加しました。

今夏の電力需給については、中部および西日本全体での供給予備率が4.5%と、電力の安定供給に最低限必要とされる予備率3%をわずかに上回る程度であり、非常に厳しい見通しです。



3. 安定供給確保に向けた取り組み

このように厳しい電力需給が継続する中、供給力の大半を担う火力発電所では、安定供給の確保に向け、ソフト・ハードの両面でさまざまな取り組みを行っています(表1・2、図3〜5)。






4. まとめ

これまで、電力会社は3E(安定供給、環境保全、経済性)の観点から、バランスの取れたエネルギーミックスを実現してきました。

しかし、震災以降、3Eに優れる原子力発電所の停止に伴い、国民の経済的負担や環境負荷の著しい増大が生じています。

また、原子力発電を代替する火力発電所では、設備の監視体制を強化するなど安定供給確保に最大限努めていますが、定期検査時期の繰り延べや高経年機の稼働により、潜在的な故障リスクを抱えており、厳しい運用が続いています。

今後、安全性の確保を大前提に、原子力発電も含む多様な選択肢を組み合わせたエネルギーミックスを再構築することが必要と考えています。

東日本大震災以降の電力需給状況と安定供給確保に向けた取り組み 誌面のダウンロードはこちら