住友商事のスーパーマーケット事業への取り組み

住友商事株式会社 リテイル&ウェルネス事業部 部長代理
中村 南

住友商事は、スーパーマーケット事業に対し、サミットストアを軸に事業展開を行っていますが、本稿では、同事業の歩みをご紹介したいと思います。

1.創業当時


第1号野沢店

本事業は、当社の米国の駐在員と食品のビジネス関連でお付き合いのあった当時全米第2位のスーパーマーケットのセーフウェイが、日本進出に興味を持ったことが発端でした。

1962年、日本進出を目指すセーフウェイと、ノウハウはなかったものの、新しい小売業態に挑戦したいという当社が、近代的なスーパーマーケットを経営することで合意し、日本での店舗展開を目指すことになったのです。


第1号野沢店、開店予告チラシ

この合意が小売業界に与えたインパクトは大きく、日刊紙や雑誌がこの事業を大きく取り上げたことも相まって、小売商団体は、米国の巨大資本参入に対する進出阻止運動を展開することになりました。

思いもかけなかったこれらの反対運動により、当社はその後の事業展開に軌道修正を余儀なくされました。

出店候補地の選定にも影響を及ぼしており、候補地の視察情報が日刊紙の報道より露呈してしまい、地元の商店の反対を考慮し、断念せざるを得ないこともありました。こうした逆風の中、1963年 10月、東京都世田谷区野沢に1号店を開店します。野沢店は、売り場づくりや内装、レイアウト、設備面などでセーフウェイの指導を受け、生鮮 3品(青果、精肉、鮮魚)のプリパッケージやセルフサービスの販売方式などについても米国のスタイルで導入しました。


野沢店の売り場

今でこそ、プリパッケージ商品は、小売店舗で主流の販売方法になっていますが、当時は、まだ肉屋、魚屋等での対面販売が中心だったため、斬新過ぎてお客さまには、なじみませんでした。

また、当時の米国の洋食文化と日本の和食文化とでは、今とは違い、お客さまの求めるものが異なっていたはずですので、商品も日常の食卓に並ぶ和風料理を連想した食材中心に品ぞろえすべきであったと思っています。


2.改革時期~現在へ


野沢店の開店の翌年、1964年11月には千葉県船橋市に2号店を開店します。

2号店も1号店同様、米国の先進的なノウハウを導入したのですが、お客さまの反応は芳しくなく、売り上げの低迷が続き、1965年1月には、ついにセーフウェイとの関係を清算することになりました。

新たな出発にふさわしく、店舗名を「サミットストア」(以下サミットという)に改名し、独自路線での運営を行うことになりました。

しかし、店舗運営のノウハウや仕組みづくりの経験も十分でない状況で多店舗展開を実施したため、累損を一層膨らませる結果となり、ますます窮地に追い込まれました。

こうした厳しい経営環境の中、1970年に当社より新たに2人の出向者をサミットへ派遣しました。多くの社員の頑張り、工夫と知恵、出向者による努力のかいがあって、今まで手付かずだった経営改革を次々と実行していきます。

短期間のうちに、経営の最高意思決定機関である経営幹部会を発足させて、責任を明確化し、それまで不十分であった給与規則をはじめとする就業規則等の整備を行いました。また実務面では、棚卸し作業の改善、各種マニュアルの整備も実施しました。

そして、1971年度(1972年3月期)決算では、念願の経常黒字を計上しました。この時期以降、会社経営の基礎固めが進み、混迷から脱出し、継続的な出店を続け、成長期に入っていきます。

立地戦略としては、広い首都圏の広範囲への出店ではなく、世田谷区、杉並区を中心に出店を続けていきますが、これは、現在も続くサミットの店舗展開の特徴の一つとなっています。


成城店売り場

当時は、専ら大型化による成長戦略が顕著な時代でしたが、サミットは、立地戦略に照らし、自社の適正規模を貫いてチェーン・オペレーションを構築していきました。

サービス水準向上の観点からは、特に、生鮮の品質アップへの取り組みを重視し、例えば、精肉では、商品の製造をセンターでの加工から店内加工に切り替えました。

これにより、鮮度アップのみならず、十分な商品管理を実現しながら、お客さまのニーズに応じた販促企画も可能となり、お客さまの信用や信頼を徐々に獲得することができました。軌道に乗ったサミットは、お客さまに支えられ、その後も順調に店舗を増やし、2014年6月末時点で109店舗を展開するスーパーマーケットに成長し、2013年、創業50周年を迎えることができました。

販売活動以外の社会貢献の面では、2006年より「サミットの森」と称し、生活に欠かせない安全な水を安定的に供給することを目的として、東京・神奈川の水源林である山梨県北都留郡丹波山村で森林整備活動を支援しています。

住友商事は、サミットを足掛かりに、スーパーマーケット事業をはじめ、さまざまな分野でリテールビジネスを展開していますが、同分野の中核事業として、今後もサミットの事業育成に注力していきます。

住友商事のスーパーマーケット事業への取り組み 誌面のダウンロードはこちら