宮城県の震災復興に向けた取り組みと商社への期待

宮城県知事
村井 嘉浩

東日本大震災から3年半が経過いたしました。一般社団法人日本貿易会および会員企業の皆さまにおかれましては、震災からの復旧・復興に向けて、発災直後から物心両面にわたり、多大なるご支援を賜っておりますことに、県民を代表して厚くお礼申し上げます。

着実に進む復興

宮城県では、2011年10月に、「宮城県震災復興計画」を策定し、10年間の復興期間を復旧期、再生期、発展期の3 つの期間に区切り、2013年度までの3年間を復旧期として、被災者の生活再建や失われた事業所の再建といった「くらし」と「なりわい」の復旧を最優先に掲げ、取り組んでまいりました。

いまだ仮設住宅には8万人以上、県外避難を続けている方が8,000 人以上という大変厳しい状況ではありますが、復興は着実に進んでおります。1,951万t に及んだ災害廃棄物および津波堆積物は2014年3月に処理が完了しました他、仙台塩釜港のコンテナ貨物取扱量はほぼ震災前の水準となり、農地の復旧面積、操業する漁船の数は共に約8割までに回復しております。被災者の懸命の努力もありますが、国内外の皆さまから寄せられたご支援に負うところが大きく、感謝の念に堪えません。

商工業の厳しい現実

被災地の現状を申し上げますと、沿岸部の一部では地盤のかさ上げといったインフラ整備に遅れが生じていることや、被災事業者の販路の回復、観光客の回復の遅れなど、さまざまな課題が山積しており、対策に取り組んでいるところです。

商工業の分野では、これまでもグループ補助金の活用をはじめ、被災事業者の復旧支援に全力で取り組んでおりますが、水産加工業を中心に、震災後の事業停止に伴う販路の喪失に加え、原発事故に伴う風評被害もあり、売り上げの回復が困難な状況にあります。

これらの解決に向けては、風評払拭に向けた正確な情報発信に力を入れ、さらに国内外への新たな販路の開拓や新商品の開発、新たな販売方法などの支援に取り組んでおります。

観光業も深刻です。宮城県への観光客入込数はようやく震災前の9割まで回復しましたが、沿岸部は被災による宿泊施設の不足等から、そこまでには至っておりません。また、2013年は国内への外国人旅行者数が過去最高を記録している中で、宮城県における外国人延べ宿泊者数は震災前の半分にも満たず、風評被害による影響が色濃く表れていると思われます。

被災地においては人口減少や高齢化などの社会問題が加速しており、観光面における交流人口の拡大は地域の活力を維持していくために最も重要な取り組みの一つと考えております。観光客の回復に向けては、首都圏や関西圏での観光PR や受け皿となる沿岸部の宿泊施設の再生にも力を入れるとともに、復興ツーリズムや教育旅行の誘致など、南海トラフ地震や首都圏直下型地震などに備える防災意識の高まりを受けて、被災地でしか体験できないコンテンツを提供してまいります。

創造的な復興に向けて

2014年度からは、「再生期(4年)」を迎えました。

被災者に対する手厚い支援の継続とともに、「創造的な復興」に向け、単なる「復旧」にとどまらない抜本的な「再構築」を基本理念とし、10年先の日本のモデルとなって、宮城から全国に発信することを目指し、宮城県、さらには東北の発展により、巡り巡って被災地に大きな光が当たるよう、施策の種をまくことにも力を注いでまいります。

これまで、漁業権を民間企業に開放し、地元漁業者中心の法人への投資等を促進する「水産業復興特区」を実現するなどしてまいりましたが、今後さらに仙台空港の民営化、放射光施設の誘致、広域防災拠点の整備など震災がなければ実現できなかったことにも果敢に取り組んでまいります。そして、地域に新しい価値を生み出し、地域の社会や経済に活力をもたらすことで、宮城県のみならず東北の復興と発展をけん引する力にしたいと考えております。

商社への期待


日本初の民営化に向けた手続きが進む仙台空港

こうした取り組みを進めていく上で、震災前から私が大切にしていることが一つあります。それは「民の力を活かす」ということです。販路回復や交流人口の拡大など復興の取り組みを進めていく上で、商社の皆さまには県内企業の良きビジネスパートナーとして、手を携えてより高みを目指したり、新たなパートナーへの橋渡しなど、商社のノウハウや人材、ネットワークを活かした多岐にわたるご支援を頂いております。

これまでも多くのご支援を頂き復旧・復興に取り組んでおりますが、行政の力だけでは創造的な復興を成し遂げることはできません。商社をはじめ民間企業の皆さまには、これからも宮城県でその強みを十分に発揮していただければと考えております。そのために皆さまからは、ニーズやアイデアをお寄せいただき、共に考えていければと思っております。

宮城県では、復旧・復興に取り組む姿と、これまでのご支援に対する感謝の思いを国内外に伝えてまいりますとともに、創造的復興の実現に向けて全身全霊を傾けながら取り組んでまいりますので、今後とも皆さまのご理解とご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

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