年頭所感

一般社団法人日本貿易会
三菱商事株式会社 会長
小林 健

明けましておめでとうございます。令和3年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

昨年を振り返りますと、新型コロナウイルスにより世界経済・社会が大きな打撃を受けた未曽有の1年でした。感染拡大を防ぐため、各国でロックダウン(都市封鎖)や外出規制等が導入され、日本も東京オリンピック・パラリンピックの延期を余儀なくされるなど、大きな影響を受けました。日本政府は、感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けてさまざまな施策を総動員しています。しかし、ヒトとモノの往来が世界的に制限される中で日本の経済成長は大きく落ち込み、都市部への人口集中、サプライチェーンの脆弱性、デジタル化の遅れ等の積年の課題も鮮明となりました。

このような中、昨年9月に菅政権が発足し、デジタル庁の設置等の諸施策にスピード感を持って取り組むと共に、2050年カーボンニュートラルの実現を目指すことが宣言されました。通商関係では、日英EPAが両国政府関係者のご尽力により極めて短期間で合意され、本年1月1日に発効となりました。さらに、長年にわたって交渉が進められてきたRCEPが昨年11月に署名されました。RCEPはアジア地域の貿易・投資の活性化や、サプライチェーンの強靭化・効率化に資することが期待されています。

また、米国では昨年11月に大統領選挙があり、近く発足する新政権は国際協調や同盟国との関係を重視する路線に回帰するとみられています。パリ協定への復帰を含めて環境対策にも注力する方針を示しており、われわれもこれをチャンスと捉え、いろいろな取り組みを進めていく必要があります。世界が注目する米中の対立は継続するとの見方が大宗を占めています。そうした中、日本はさまざまな国や地域と連携の上、新たな国際協調の機運を作り上げ、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、引き続きリーダーシップを発揮していく役割が求められると思います。

本年は世界を再び平和で安定した軌道に回帰させ、持続可能な経済・社会を構築していく上で重要な1年となります。そのためには、安全で有効なワクチンが世界的に広く普及していくことが必要で、既に英国等一部の国で接種が始まっており、その効果が期待されるところです。貿易業界では、ポスト・コロナを見据えた新たなビジネスモデルの構築、サプライチェーンの見直しや脱炭素化をはじめとする社会課題の解決への取り組みを強化していく1年となるでしょう。また、デジタル化が一段と加速する中、デジタルトランスフォーメーション(DX)による圧倒的な構造改革を実現することが必要です。日本貿易会では、各社の活動を後押しすべく、各種の研究・検討や政策提言を引き続き積極的に行って参ります。

昨年、日本貿易会が設立した国際社会貢献センター(ABIC)は、設立20周年を迎え、活動会員が3,000人に迫るなど、ますます活動の幅を拡大しています。当会はABICとも手を携え、社会のさまざまな課題解決に取り組んで参ります。

日本貿易会は半世紀にわたって拠点としていた浜松町を離れ、本年より、霞が関の新オフィスでの活動を開始することとなりました。新オフィスには、会員企業が安心してより効率的にコミュニケーションを図れる新たなファシリティを整えています。当会のキャッチフレーズ「未知の時代を切り拓く」を実践し、ポスト・コロナの未知なる世界を開拓して参る所存です。

本年も、日本貿易会の活動への格段のご理解・ご協力をいただきますようお願い申し上げると共に、本年が皆さまにとりまして、実り多き年になりますようお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

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