極東ロシアにおける自動車ディーラービジネス

Summit Motors Khabarovsk
General director
Andrey Dudchenko
Exective DirectorAnton Goot
住友商事株式会社
自動車流通事業第一部 第二事業チーム部長付
一平 大助

左から、Goot副社長、Dudchenko社長、一平部長付


極東ロシアのマーケットが持つ潜在的な可能性


ロシア東部市場における登録済み車両台数のブランド内訳(%)

住友商事は、トヨタ・レクサス車の販売事業を幾つかの国・地域で展開しており、極東ロシアにおいては、ウラジオストクにSummit Motors Vladivostok( 以下SMV)とハバロフスクにSummit MotorsKhabarovsk( 以下 SMK) の2社を設立、トヨタ販売店(計2拠点)とレクサス販売店(計2拠点)で車両販売やアフターサービスを行っています。両拠点はロシア極東地域(国土の36%)をカバーしており、SMVが1992年の開所から25周年を迎え、極東における正規ディーラー事業においては、最も長い歴史を持っているのが特徴です。ソ連当時、極東では地理的要因から日本製中古車の輸入・販売が盛んであり、その品質においても信頼を勝ち得てきました。極東における自動車市場について、直近5年間では、2014年の中古車が35万台、新車が2万4,000台をピークに、この直後、欧米による経済制裁によって、2015年に市場が大きく落ち込んでいますが、2016年以降は回復の兆しを見せています。

2都市を見ると、日本車が走っている姿を多く目にされると思いますが、その中でもトヨタはロシア東部地域での登録済み保有台数全体の約50%を占めており(グラフ)、そのブランド力がとても大きいことが分かります。ロシアでは一般的に食品、医療等、さまざまな分野で日本ブランドが高い支持を得ていますが、自動車においても同様で日本車に対する信頼は非常に高いと感じています。

SMV・SMKが属する沿海州、ハバロフスク州では、2017年には新車販売全体7,800台のうち、トヨタ車とレクサスで3,500台を達成し45%近いマーケットシェアを占めました。高級車として知られるレクサスも、近年モスクワにおける人気ぶりが目立っていましたが、当地でも安定した販売を維持しています(2017年レクサスマーケットシェア実績、沿海州:15%、ハバロフスク州:12%)。

サミットモーターズVVO・KHVの成長の理由

自動車社会であるロシアで当グループが成長してきた背景には日本ブランドへの信頼感の他にも、以下の三つが挙げられると考えています。

(1)販売・サービスの品質


センターで整備中の自動車

当グループは、機器設備やメンテナンス技術、接客サービスにおいて日本の品質を基準としています。日々「改善」を心掛けており、2015年にはロシア国内におけるトヨタ販売店の中で、「ベスト改善賞※」をSMKが、2017年にはベスト・フィナンシャルマネジメント賞をSMK(1位)、SMV(2位)が受賞しました。おもてなしをベースにおいた接客や、日本品質の業務マネジメントが実を結んだものだと考えています。
※前年の各種KPIを基準とした改善率が最も大きい販売店に贈られる賞。

(2)地域の人々と親密な関係性を構築

当グループは、社会にオープンな企業として、地域住民や企業、地方政府との「つながり」を大切にしています。これまでも、さまざまなイベントを開催し、地域からの信頼向上に努めてきました。その例としては、小学生などの幼い子供たちを対象とした自動車整備体験イベントや「夢の自動車」絵画コンクールです。また、世界女性の日(3/8)には女性向けに凍った湖の上で試乗やドリフトを体験できるイベントも毎年開催しています。レジャーの選択肢も多い地域ではないため、お子さまを対象とした家族全員で楽しんでいただけるような内容を心掛けています。自動車に関する催し以外に、レクサス販売店を活用した他企業とのコラボレーション型イベント(ファッションショーや時計の展示会)も行っており、他社との協業により、新たな顧客層の拡大にもつなげています。

(3)住友商事との綿密なコミュニケーション


キッズイベント後の写真

社会の変化に伴い、求められるニーズも変容しています。お客さまからの期待に臨機応変に応えられるよう、親会社・パートナーである住友商事とのコミュニケーションを密に行っており、グループ内におけるベストプラクティスの共有や未来に向けた戦略について日々、議論を行っております。


極東ビジネスに新しい風を


ロシアは現状インフレ率も落ち着いており、1人当たりのGDP、所得レベルも将来的には上昇すると見込まれています。また極東地域は日ロ両国にとって重要視されており、まだまだ成長の余地は高いと考えています。当グループは極東でのビジネスを単なる流通事業に終わらせず、お客さまのニーズに柔軟に対応し、新しいサービスをつくることで、マーケットの需要に応えていきたいと考えています。トヨタ・レクサス事業を通じて、お客さま・社会・社員の幸福・発展に貢献し、インターナショナルカンパニーとして、これからも極東に新たな価値を創造してまいりたいと思います。また、当グループから、ビジネスマンとして厳しく訓練されトヨタの哲学を身に付けた人材を社会に輩出していくことが極東の発展に寄与していくと信じています。

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