「新しい時代」をしたたかに勝ち抜き、さらなる高みへ

一般社団法人日本貿易会 副会長 丸紅株式会社 社長
國分 文也

後から振り返ると、2016年は大きな時代の転換点を迎えた年であったといえるかもしれません。世界の至る所で既存の秩序が揺れ動き、先行きが見通しづらくなっています。

2015年末、米国は実に9年半ぶりの利上げに踏み切りました。長年にわたり余剰マネーに慣れきった世界経済が、今後どのように課題を克服し成長していくか、世界は新たな局面を迎えたといえるでしょう。リーマン・ショック後の世界経済をけん引してきた中国は、高度成長から新常態(ニューノーマル)への移行がスムーズに進むかどうかが最大の焦点です。低迷が続く資源価格については、新興国経済の減速が予想される中では、当面、本格的な回復は望めないでしょう。

国際情勢も不透明感を強めています。中東情勢をめぐっては、イスラム国の台頭や多発するテロ行為、欧州への難民流入を背景に、世界各国で排他主義的な動きが強まっています。米国の国際社会での影響力が低下する中、制裁下で存在感を誇示するロシアや、攻勢を強める中国など、各国の主導権争いがより複雑化しています。こうした動きを通じて、世界経済の減速傾向を助長するリスクが高まります。

一方で、世界には新たな大きなうねりも見られます。

新興国では成長鈍化が見込まれますが、中国やアジア諸国を中心に、旺盛なインフラ需要に加え、分厚い中間層が生まれつつあり消費市場は急速に拡大しています。制裁解除に向かうイラン、キューバ、新政権の手腕が試されるアルゼンチン、ミャンマーなど、新たな市場の開放・拡大が期待される国々も出てきました。さらに、産業分野においては、IoTや人工知能、ビッグデータなどの情報技術が急速に進化し、TPPはじめEPAを通じた経済連携の動きは着実に広がっています。

こうした新しい潮流は、今後の世界経済の未来に期待を抱かせます。

不確実性の時代を迎え、現在、世界規模でのボラティリティはかつてないほどに高まっていると感じます。こうした中、われわれ商社には、世界のさまざまな課題に対して有効なソリューションを提供し、経済や地域社会の発展に貢献していく役割が一層求められます。そのために、変化への対応力、機能、競争力を磨き上げ、世界に通用する強靭な事業基盤を構築するとともに、飽くなき挑戦者としての意識を持ち続け、世界との競争に果敢に挑んでいきたいと考えています。

これから始まる「新しい時代」をしたたかに勝ち抜き、さらなる高みを目指してまいります。

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